反対咬合(受け口)
下の歯が上の歯より前に出ている受け口(反対咬合)、かみ合わせが悪いため、食べ物をしっかりとかみ砕きにくく、息がもれるため発音が上手くできないなどの症状があります。こういった反対咬合は厚生労働省によると、3歳児健診で年間約4万〜5万人(4〜5%)が該当するといわれています。
大抵は「永久歯が生えるまで様子を見ましょう」といわれ、放置されるケースが多いのですが、自然に治療する割合は1割に満たないのが現状です。小学上級生以降になって、頭にベルトを巻き、下あごを押さえつける「チンキャップ療法」などが試みられますが、子供への負担が大変大きいのがデメリットです。
そこで最近注目されているのが、幼児のうちに改善させる「ムーシールド」による治療法です。寝ている間、口に特殊なマウスピースを装着する方法です。
受け口は舌の位置が低く、下あごを前に押し出すように筋肉の圧力が働きます。マウスピースの装着で舌の位置をあげ、口の周りの筋肉を正常化することで、上あごの成長を促し、下あごの成長を抑える効果があります。対象年齢は3〜6歳。装着は寝ている間だけで済み、6ヶ月〜1年で効果が表れ、約9割で改善が見られる結果が出ております。
受け口を治す子ども用のマウスピース |
治療前の受け口 |
マウスピースで改善された正常な歯並び |
受け口治療に関するQ&A
反対咬合って、自然に治るでしょうか?
永久歯が生える時、自然に治ることがあります。ただし、かなり少数例です。反対になっている下の前歯が、5〜6本。逆の咬み合わせが深い。近親に反対咬合の人がいる。これらの場合、自然に治る可能性は、極めて少ないと考えて良いでしょう。
反対咬合、治した方が良いの?
不正咬合であるから、成長発育が遅れるという事は基本的にありません。しかし、サ行、タ行の発音に、特徴的な舌足らずの喋り方になる。食べ方がワニの様だ。という様な特徴が現れます。しかし、私たちが、治療を勧める第一の理由は、審美的な理由です。反対咬合特有の顔貌に、劣等感を感じる事があります。心の負担を軽くし、生活の質の向上が目標です。
早く治した方がよいの?
咬み合わせを、逆のままにしておくと、下顎骨が過成長し易い状態が続きます。下顎骨が取り返しのつかない程、大きくなってしまう前に、逆の咬み合わせは、治しておくべきです。早ければ早い程、ご本人の負担は軽くて済むと思います。年齢が高くなると、治療法の選択肢が狭くなります。過成長し、大きくなってしまった「下顎骨を切断して縮める」という手術法も、選択肢に上がってきます。
どうして反対咬合になるの?
口には、多くの筋肉が整然と並び、機能しています。舌は、代表的な筋肉の固まりです。きれいな歯並びの人の舌は、嚥下(飲み込む)する時、上顎を押さえつける様に、ぴったりと収まります。しかし、反対咬合の人は、上顎には付きません。嚥下の都度、舌は下顎を前方に押します。従って、上顎は小さく、下顎は大きくなってしまうと考えられています。すなわち、口腔周囲の筋肉が正しく機能しないと、不正咬合になるという事です。
どうやって治すの?
筋機能のアンバランスが、不正咬合を造ります。バランスを整え、調和を取り戻せば、不正咬合は回復します。反対咬合の原因の一つは、舌が低い位置で機能している事です。ですから、治療目標は、まず、舌を挙上して上げることです。その様に、バランスを取り戻す器具が、機能的愕矯正治療、ムーシールドです。就寝中使用します。取り外しできる装置ですから、上手く使えなかったり、諸条件によっては、期待する効果を得られないこともあります。十分相談の上、ムーシールドを使う事を、お勧めします。
一度治したら、もう大丈夫?
ムーシールド治療法は、大抵の場合、およそ1年間を目標に治療します。一度治したら、「もう大丈夫」という人が、大半です。しかし、成長がスパートする頃、再治療を必要とする場合があります。定期検診は重要です。女子は15〜16歳。男子は17〜18歳まで成長します。その頃まで、定期検診を続けることが理想です。
反対咬合は遺伝する?
反対咬合は、遺伝します。顔形は、ご両親に似ます。残念ながら、反対咬合の家系があります。しかし、早めに対処することで、かなり改善できると考えられています。いずれにせよ、遺伝の有る無しに関わらず、早めに受信する事をお勧めします。